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LGBT当事者の不動産購入と住宅ローン

2021.10.25

最近日本でもLGBTカップルが現在、社会で被っている不利益を解消しようという動きが様々な分野で見られるようになっています。

 

携帯電話のファミリーサービスの適用を受けたり、死亡保険金の受取人をパートナーにするなど様々なサービスを身近に受けられるようになりました。

 

また、会社などの人事労務制度でも同性パートナー関係を対象に、結婚祝いなどの祝金を出したり、パートナーを配偶者として扱い、福利厚生を手厚くするなどもあります。

 

先日弊事務所でもLGBTカップルがお越しになりパートナーと一緒に住む家を購入したいとのご相談をいただきました。

 

「新型コロナの影響もあり自宅で二人過ごす時間が増えたこと、一緒に住む家を購入し共有財産をともに作り、責任のあるパートナー関係を作りたい、ということが理由です。」と力強くお話しされていたことが印象に残っています。

 

さて、この人生最大の買い物といわれる不動産売買ではLGBTカップルの場合どうでしょうか。

 

数年前まではLGBTカップルでは、どちらか一方(収入の多い方等)が住宅用ローンを組み、他方が内部的に返済の一部を一緒に負担するという方法が主流でした。

 

なぜならば、同性カップルでは、法律上の男女夫婦のようにそれぞれの収入を合算できる住宅用ローンがなかったからです。

(収入の合算とは二人の収入を合わせた額を収入基準として定め、その収入基準に対して借入額の上限を金融機関が審査するため、単独で借りるよりも借入額を増やすことができます。)

 

しかしこの方法ですと、ローンを組んでいない他方が内部的に一方に支払うお金が、一方の不動産取得(家賃収入)にあたり確定申告が必要になったり、贈与(資金援助)とみなされ贈与税の対象となるなど問題が多くありました。

 

その他にも、途中で別れてしまった場合は内部的にお金を出していても共有財産として財産分与等の権利主張は難しくなるでしょう。

 

ましてや、ローンを組んだ方がお亡くなりになられた場合は他方には相続権がないため財産分与どころか相続人から家を追い出される可能性が大です。

 

その点、最近ではLGBTカップルが利用できる住宅用ローンも金融機関の商品として数多く登場してきています。

 

内容としては大きく分けると二つあります。

 

① 一人が主債務者となりもう一人が連帯保証人となる、住宅用ローンの連帯保証人に同性パートナーを認める金融商品。

② 同性パートナー同士が借入額を折半しそれぞれが折半額でローンを組むことを認める金融商品。

 

お互いの収入を合算できる住宅用ローンが登場しLGBTカップルでも一緒に住宅の購入がしやすくなってきています。

 

そして、このような住宅用ローンを利用するためには多くの金融機関で、パートナーシップ合意契約に係る公正証書と、お二人相互間での任意後見契約を登記した登記事項証明書が要求されています。

 

法律婚の場合は、離婚するにあたり法的に財産分与を請求することができますが、先ほども触れたように、LGBTカップルの場合は法的な婚姻関係にあたらないため、離別時に相手に財産分与を請求することが難しく、トラブルに発展する可能性があるからです。

 

そのため多くはパートナーシップ合意契約の内容として、お二人が愛情に基づくパートナー関係にあることをお互いに確認し、婚姻関係に準じた関係を作り、共同生活を送ること、離別時の財産分与請求権のことを合意契約書の条項として記載します。

 

また、お二人相互間での任意後見契約は住宅用ローンの返済は長期にわたりますので途中、一方が事故、病気、認知症などで判断能力が不十分になってしまった場合でも、もう一方が後見人として債務の返済に責任をもつことが必要なため要求されています。

 

この二つの契約によって金融機関も安心してお金を融資することができるようになります。

 

しかし、一方がお亡くなりになられた場合はどうでしょう。

 

住宅用ローンの返済途中にパートナーがお亡くなりになられた場合、団体信用生命保険に加入していれば残りの債務の返済は免除されますが、残されたパートナーは相続人ではないため、相続人である遺族が相続権を主張した場合、二人で購入した家に住めなくなるおそれがあります。

この点は現在の住宅用ローンで要求されている契約書類だけではカバーしきれていないのが実状です。

 

金融機関からは要求されていませんがプラスアルファとして残された一方が安心して生活できるよう、一緒に購入した家をパートナーのために残すには自分自身で遺言を用意をする必要があります。

 

このように住宅を買う場合はどちらの住宅用ローンを使い単独名義で買うか、共有名義で買うか、離別する場合はどちらが退去するか、その場合の精算方法はどうするか、死んだ場合はどうするか、などをあらかじめ検討することが重要です。

 

二人で住宅を購入をする場合は、マネープランだけでなく、法的な部分も含めた全体にわたる総合的な観点が必要ですので、専門家にご相談いただければ安心いただけるかと思います。

 

住宅用ローンや他にも少しでもお悩みやご相談のある方は是非一度弊事務所にご連絡くださいませ。

お二人に合った最適なものをご提案させていただき、ご安心いただければと思います。

 

弊事務所は福岡、東京の2拠点にて事業展開しており、セカンドオピニオンとして、他事務所に相談中の方に関しても随時相談を受け付けております。

福岡市が後援しているLGBTのセミナー講師も在籍しており、今後もセミナーを予定しております。ご興味のある方はお話だけでも、お気軽にご連絡くださいませ。